「俺のこと、忘れないでね」

嫌な、予感がした





―――PRecIoUs thInG...














嫌な予感がした
でも気のせいだと思った
俺は任務に向かった
貴方の笑顔が見たかったから

大丈夫、きっとまた俺は貴方を信じてるから
でも、もし貴方が…―――

「十代目が…たった1人でミルフィオーレに向かった!?」

アジトに帰った俺に届いた知らせは
小さな不安を確かなものにした

もう、会えない…??

そんな絶望が頭の中を周り続ける
ぐるぐると、止まらない

「俺…行ってくる!!」
「獄寺!?」

失いたくない
嬉しいときでも悲しいときでも
貴方はいつでも泣いていた

『ごめんね』

そう言ってまた涙を溢す

大好きな飴玉を渡すと、屈託のない笑顔になって
ぎゅっと抱きしめると、真っ赤になって抵抗してくる

そんな貴方がとても愛おしかった



「十代目!!」

堅く閉じられていた扉を開くと悲しい銃声こだました

………もし
…もし、貴方が消えてしまったら俺はどうすればいいんだろう

…貴方が死ななければ
俺の目に映らなければ
こんな気持ちにはならなくてすむのだろうか

でも、死なない貴方見えない貴方
…そんなの違う俺は貴方だから好きなんだ


「十代目…十代目!!」
「…はや…と…??」

何で何でもっと速く走れなかった??
もっと早く帰ってこなかった??
信じられない、自分が俺がもっと早く気づいていれば十代目は…―――ッ

「隼人の…せい…じゃな…い」
「十代目!!今止血を!!」
「…無駄、だよ。俺は…ここで、死ぬ…から」
「嫌だ…嫌です!!十代目がいないと俺は…!!」

十代目の小さな手が
俺の言葉を遮る様にそっと俺の頬をなぞる

「忘れ、ないで…俺のこと…」
「十…代目」


昔、俺は言った俺は貴方を思い出になどしない
ずっと一緒に居るから貴方とさよならして思い出になるなんて有り得ない


「…十代目ぇ……」

有り得ない程の涙が俺の目から溢れ落ちる
ずっと一緒に居たかった
一緒に笑って一緒に泣いて貴方と居れれば何だって良かったのに

それさえも今は叶わない

「ね…隼人…」
「十代目…??」
「……―――」

その言葉を伝えると十代目は静かに目を閉じた
きっともう目覚めることはない

でも

そんなの嫌だわかっていても納得できない
もう一度目を開いて笑ってくれたなら…―――

「十代目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ――――――ッ!!」





静寂の中ただ哀しく鐘の音が響く

最後のお別れです、

その言葉を心の中で目一杯否定した
お別れなんかじゃない
俺の心の中にずっとずっと

ポケットの中の飴玉を右手でぎゅっと握り潰す
掴めるだけ掴んで十代目の棺にそっと落とした

『……大、好き』





――大切ナモノ 貴方ノ心ガ、宝物
           precious thing...  amedama no uta by BUMP






BUMP第2段。
これも友達に頼まれて書いたものです

えー…飴玉の唄ですね
さりげなく続きものになっております